クレドミーティング導入事例 − 株式会社 大河内工務店(香川県三豊市) 「クレドミーティング」の導入効果を、株式会社大河内工務店 代表取締役の大河内孝氏にうかがいました。
従業員が、自分達でクレドを完成させてくれた-- はじめに、大河内社長の自己紹介をお願いします。 株式会社 大河内工務店 代表取締役、大河内 孝(おおこうち たかし)と申します。 “伝説の棟梁”と呼ばれた父、大河内 秀夫(おおこうち ひでお)の技と心を受け継ぎつつ、“お客様ご一家の幸せづくりとしての家づくり”を心がけての工務店経営に、日々精進しております。 -- 大河内工務店では、「クレドミーティング」をどう利用しましたか。 当社では、2009年、WISHパートナーズの「クレドミーティング」を導入しました。 導入後、計4日間の「クレド作成ミーティング」で、従業員達が自ら、当社の「クレド(※)」と「クレドベーシック(※)」を完成させてくれました。 ※クレド‥‥事業を行なう上での信条。「使命」、「事業価値」、「ビジョン」から成る。 ※クレドベーシック‥‥「クレド」に基づく日々の行動基準。
完成した「クレド」と「クレドベーシック」は、名刺サイズに折りたためるカードに印刷し、当工務店の従業員と職人達に配布しました。このカードは、勤務時間中は全員が常に携帯しています。
「クレド」と「クレドベーシック」の完成後は、毎月1〜2回、「クレド浸透ミーティング(※)」を実施しています。 ※クレド浸透ミーティング‥‥完成したクレドを社内に浸透させるミーティング。従業員が日々の仕事を共に振り返りながら、具体的にどのような行動が自分達の「クレド」・「クレドベーシック」ふさわしいのか、話し合う。 ファシリテーター(※)は、「クレドミーティング」導入時から現在に至るまで、WISHパートナーズ代表の赤木浩二氏に務めていただいてます。 ※ファシリテーター‥‥「クレドミーティング」の司会・進行役。参加者からの発言を掘り下げ、日々の具体的な行動に結び付く言葉を、参加者から引き出していく役割を担う。 受注棟数・売上高が前年比120%〜125%の伸びに-- 「クレドミーティング」の導入効果を教えてください。 「クレドミーティング」の導入後は、受注棟数も売上高も、前年比120%〜125%の勢いで伸び始めました。 -- 「クレドミーティング」の導入と、受注棟数・売上高の伸び率アップとの間に、どのような関係がありますか。 「クレド作成ミーティング」で作成した「クレド(信条)」・「クレドベーシック(行動基準)」は、従業員が自分達で考えてくれた信条・行動基準です。ですので、どう行動すればこれらの信条・行動基準にかなうかは、従業員達が自ら考えてくれます。 毎月の「クレド浸透ミーティング」では、従業員が自分達の仕事を振り返り、どうすれば「クレド」・「クレドベーシック」で宣言してるような仕事ができるのか、自分達で話し合い、自分達で答えを見つけ、自分達で実行してくれます。 結果として、課題が発見され、共有され、解決されるスピードが、目に見えて速くなりました。 従業員達が、常に「どうすればお客様に心から喜んでいただけるのか」を第一に考え、行動し、協力し合ってくれるようになりました。 会社のベクトルと、従業員一人一人の意識のベクトルが、一つにまとまってきました。 社長の私は、従業員のマネジメントに時間やエネルギーを取られることが減り、将来を見据えた仕事に使える時間とエネルギーが増えました。 「クレド」や「クレドベーシック」に書いてある事がスタッフ一人ひとりに浸透していったのでイベントなどを通じて接した時の満足度があがり、口コミで伝わっていったのか、直接来社され、「家の相談をしたい」と言う方が格段と増えてくるようになりました。 イベントを増やすと言うことは一般の広告とは違い、より私たちの実際の姿をさらけ出すことになりますのでもし「イメージとは違う」となると逆効果に繋がります。そのためにも気持ちを揃えるということはとても重要になってくると感じます。 もちろん、クレドミーティングを導入したことだけが原因で受注棟数・売上高が伸びたわけではありません。しかし、クレドミーティングを導入したことが、業績の伸びに貢献したことは間違いないと考えています。
家が完成して引き渡す時、お客様が「寂しい」と涙を流す-- 他に、「クレドミーティング」を導入して変わったと感じることはありますか。 家が完成して引き渡す時の、お客様の様子が変わりました。 お客様がよく涙を流されるんですよ。「もうあなた達に会えなくなるのが寂しい」って。 別に、泣いてもらうことを狙っているわけではないんですよ。 「クレド」や「クレドベーシック」ができるまで、こういうことは、あまりなかったことです。 -- 「クレド」・「クレドベーシック」の完成と、お客様がよく涙を流されるようになったことの間に、どのような関係がありますか。 一つの例ですが、当社の「クレドベーシック」に、次のような項目があります。
「いきなり『リビングは何畳いりますか?』と聞かない」というのは、家の間取り一つ決めるにも、「何畳」などという数字で決めるのではなく、「お客様ご一家にとっての幸せな暮らしのあり方」を具体的にお聞きした上で、まさにそのような幸せな暮らしができる間取りを提案させていただく、ということです。 それこそ、「奥さんは、取り込んだ洗濯物をすぐ畳んでしまうのか? それとも、どこかに一時的に置いておくのか?」ということまでうかがった上で、間取りを提案させていただいています。 だからこそ、完成した家で暮らし始めてから「ここをこうしとけばよかった、あそこをああしとけばよかった」ということにならない、本当にお客様の“幸せづくり”になる家づくりができるのです。 私達は、この「クレドベーシック」ができる前から、このような家づくりを心がけてきました。しかし、従業員達がこうして「クレドベーシック」の一項目として宣言してくれてからは、従業員達がますます熱心に、「お客様ご一家にとっての幸せな暮らしのあり方」をうかがい、そのような暮らしを実現する間取り、デザイン、部材を考えてくれるようになりました。 結果として、完成した家に対するお客様の満足度が向上したことはもちろんです。しかしそれ以上に、お客様ご一家の幸せを願う当社従業員の姿勢に、お客様が感動してくださるようになったのではないかと思います。だからこそ、家が完成した時、「もうあなた達と会えなくなるのが寂しい」と言って、お客様が涙を流してくださるのだと思います。 -- 他に、お客様の様子に変化はありましたか。 不思議なことなのですが、当社が建てた家のご評価や、従業員の対応へのご評価をうかがうと、「クレド」や「クレドベーシック」に書いてあるとおりの言葉が返って来るようになりました。お客様が、「おたくには親戚みたいに相談できる」ですとか、「『こんなこと無理かも知れないけど...』と思ったことまで実現してもらえた」といったことをおっしゃるのです。 うちの「クレド」や「クレドベーシック」を、わざわざお客様に説明しているわけではないんですよ。 従業員達が、「クレド」や「クレドベーシック」に心から従って仕事をしているからこそ、「クレド」や「クレドベーシック」の言葉が、そのままお客様の言葉として返って来るのだと思います。 社長はほぼ見てるだけ。従業員達が、想像以上に活発に発言してくれた-- 「クレドミーティング」の導入は、どのようなスケジュールで進みましたか。 当社での「クレドミーティング」の導入は、次のスケジュールで進みました。
-- 「クレド作成ミーティング」は、どのようなスケジュールで進みましたか。 「クレド作成ミーティング」は、次のようなスケジュールで進みました。
-- 大河内社長は、「クレド作成ミーティング」でどのような役割を果たしましたか。 社長の私は、ほとんど見ているだけでした。議論が望ましくない方向に行くようなら、経営者として意見させてもらわないといかんなと思っていたのですが、実際には、そんな場面はほとんどありませんでした。 -- 従業員のみなさんは、「クレド作成ミーティング」でどのような様子でしたか。 従業員達は、私が想像していた以上に、活発に発言してくれました。 討論が始まるまでは、うちの従業員達から意見が出るのか、正直、不安でした。しかし、まったくの取り越し苦労でした。普段ひょうひょうとしている従業員が、仕事への熱い思いを語ってくれたりして、彼ら・彼女らの意外な一面を知ることもできました。 発言の内容も、私の期待をはるかに超えるものが多かったです。当社のクレドにある「日本一気持ちよい工務店を目指す」という言葉は、「クレド作成ミーティング合宿」2日目の朝に、当時入社5年目39歳だった建築部長が提案してくれたものでした。私自身、当社のビジョンを表現する言葉を数多く考えてきましたが、この言葉は、私がそれまでに考えたどの言葉より、優れた言葉でした。彼の口から「日本一気持ちよい工務店」という言葉が出た時、その場にいた全員が「それや!」という表情になったことを、今でも覚えています。 -- ファシリテーターは、討論中はどのような役割を果たしていましたか。 ファシリテーターの方は、従業員達の発言を引き出し、掘り下げ、洗練させる役割を果たしてくれました。 -- 「発言を引き出す」とは、どのようなことでしょうか。 ファシリテーターの方は、討論中、次から次へと絶妙の問いかけをしてくれました。あの問いかけがなければ、うちの従業員達は、あれほど活発に発言してくれなかったはずです。 また、ファシリテーターの方があくまで「問いかけ役」に徹してくれたからこそ、本当に従業員達の言葉でできた、従業員達が心から自分達のものと思える「クレド」・「クレドベーシック」ができたのだと思います。 -- 「発言を掘り下げる」とは、どのようなことでしょうか。 たとえば従業員が「気持ちのいい挨拶が大事だと思う」と発言すると、ファシリテーターの方は、「『気持ちのいい挨拶』って、具体的にはどんな挨拶でしょうね?」と掘り下げてくれました。 そうやって従業員達に、具体的な行動のレベルまで掘り下げて考えさせてくれたおかげで、単なるお題目ではない、本当に従業員達が日々の仕事の指針にしてくれる「クレド」・「クレドベーシック」ができました。 -- 「発言を洗練させる」とは、どのようなことでしょうか。 内容としては正しくても、社外の方には理解しにくい言葉とか、社外に出すには恥ずかしい言葉って、ありますよね。「クレド」・「クレドベーシック」の言葉として従業員から提案された言葉が、そういう言葉だった時は、ファシリテーターの方が、「その表現では社外の方に見せにくくないですか? もっといい言葉はありませんか?」と問いかけてくれました。 おかげで、社外に出しても恥ずかしくない「クレド」・「クレドベーシック」が完成しました。
「クレド浸透ミーティング」で、アイディアの実現と課題の解決が加速-- 「クレド浸透ミーティング」の実施状況を教えてください。 当社では、「クレド浸透ミーティング」を毎月1〜2回実施しています。 「クレド浸透ミーティング」のファシリテーターも、「クレド作成ミーティング」から引き続き、WISHパートナーズ代表の赤木氏に依頼しています。 -- 「クレド浸透ミーティング」では、どのようなことを話し合っていますか。 「クレド浸透ミーティング」では、「クレド」・「クレドベーシック」の各項目を、全員が、日々の仕事で実践できたかどうかを確認し合っています。課題が明らかになった時は、その課題を、どうやって解決するかまで話し合います。新しいアイディアが浮かんだ場合は、そのアイディアを、誰がいつまでに実行するかまで話し合います。 -- 「クレド浸透ミーティング」の実施効果を教えてください。 「クレド浸透ミーティング」を実施するたびに、「クレド」・「クレドベーシック」が会社の血肉になっていくと感じます。作成しただけで終わっていたら、せっかくの「クレド」・「クレドベーシック」も、単なる飾り物になっていたかもしれません。 また、「クレド浸透ミーティング」のおかげで、アイディアが実現するスピードや、課題が解決するスピードが、確実に速まっています。ミーティングの中で従業員達からアイディアや課題が出されると、ファシリテーターの方が「どうすれば実現(解決)できると思いますか?」「誰がやりますか?」「いつまでにやりますか?」と問いかけてくれるので、従業員達も、自分の頭をふりしぼって、実現方法や解決方法を考えてくれるのです。方法や期限が具体的に決まる上に、従業員達自身が決めた方法や期限なので、上から命令される場合に比べて、はるかに確実に達成されていくのですね。 -- 「クレド浸透ミーティング」と、通常の社内ミーティングの違いを教えてください。 ファシリテーターという第三者の方が入るかどうかが大きな違いですが、それだけではありません。 社内ミーティングは、通常の業務の一部という感じです。「クレド浸透ミーティング」は、社内ミーティングより、ずっとリラックスした雰囲気で行われます。通常の業務とは違った雰囲気の話し合いだからこそ、普段はなかなか出て来ないアイディアや課題が浮かび上がるのです。 ファシリテーターの方も、「クレド浸透ミーティング」が社内ミーティングとはまったく別の場になるように、様々な工夫をしてくださっています。
導入を迷っている経営者へのアドバイス-- 最後に、「クレドミーティング」導入を検討している経営者の方に向けて、何かアドバイスをお願いします。 クレドの必要性を感じてはいても、クレドづくりに取り掛かれずにいる経営者の方にとって、「クレドミーティング」を導入することで得られる価値は、決して小さくないと思います。 私自身、まだ社員もいなかった10年ほど前、雑誌でリッツカールトンのクレドについて読んだ時から、将来社員が増えた時は、間違いなくこういうものが必要になると思ってきました。最初の社員を雇った7年前には、クレドづくりのセミナーにも参加しました。実際に社員が増え、全員が価値観を共有する必要性を痛感するようになってからは、クレドを作りたいという思いがますます高まっていました。しかし自分では、クレドづくりに取り掛かることさえできませんでした。 そのクレドが、WISHパートナーズの「クレドミーティング」を導入して、数週間で完成しました。社長からの押し付けではない、従業員達が「自分達のクレド」と思えるクレドができました。「クレド浸透ミーティング」での継続的なフォローにより、クレドが会社の血肉になりました。これも、クレドづくりについて知識のある、第三者的な立場の方にファシリテーターを務めていただいたおかげです。 いわゆる「人に関する悩み」を抱える経営者の方なら、会社の規模の大小を問わず、導入を検討に値するプログラムだと思います。
※ 取材日:2011年6月 ※ 大河内工務店のWebサイト ※ 取材:カスタマワイズ |