クレドミーティング導入事例 - 株式会社タック(岡山県備前市) シールドトンネル工事における「裏込め注入」施工で世界的な実績を持つ株式会社タック 代表取締役社長の瀧川信二氏(写真前列中央右)と取締役技術部長の山内悟氏(前列中央左)に、「クレドミーティング」の導入効果をうかがいました。
クレドが完成して5カ月が経過― タックでは、「クレドミーティング」をいつ導入しましたか。 (瀧川社長) 当社では、「クレドミーティング」を2011年(平成23年)に導入しました。 クレドが完成して、現在5カ月が経ったところです。 ― タックでは、どのようなクレドを作りましたか。 (瀧川社長) 当社は次のようなクレドを作りました。
〔日々の行動基準〕
体験セミナーのチラシを見て、会社の組織風土を変えるプログラムと直感― 瀧川社長は、どのようなきっかけで「クレドミーティング」を知りましたか。
(瀧川社長) 「クレドミーティング」を知ったのは、お世話になっている会計事務所さんから「クレドミーティング」体験セミナーのご案内をいただいたのがきっかけでした。 体験セミナーのチラシを読んだ時、うちが抱える課題の解決に、「クレドミーティング」が役立つのではないかと直感しました。 ― どのような課題の解決に「クレドミーティング」が役立つと直感したのですか。 (瀧川社長) 会社の組織風土を「与えられた仕事をこなす」という風土から、「やるべき仕事を自ら考える」風土に転換するという課題です。 当社は長年、「とにかく目の前の課題を解決すること」だけに集中して突っ走ってきた会社でした。 社員たちに対しては、「あれをやれ、次はこれをやれ」と何でも上から指示するスタイルでやってきました。 全国でトンネル工事が盛んに行われ、次々に来る依頼をこなすだけで精一杯だった頃は、このスタイルで通用しました。 しかし今、国内の仕事量は、10年前の3分の1まで減っています。 「与えられた仕事をただこなす」という組織風土のままでは、会社が立ち行かなくなることは目に見えていました。 今の組織風土をなんとか脱して、「やるべき仕事を自ら考える」組織風土に変えたいという思いは、ずっと持っていました。 ― 「クレドミーティング」を導入する前に、組織風土を転換するための取り組みを何かしましたか。 (瀧川社長) はい。まず一昨年2009年(平成21年)、我々経営陣が中心になって当社の「企業理念」をまとめました。
この「企業理念」をまとめたことで我々経営陣は、お金だけではない、より本質的な観点から日々の判断を下せるようになりました。また、会社の目標・志が定まったことで、経営者としてのモチベーションを改めて鼓舞されました。 ただ、この「企業理念」は、あくまで我々経営陣が作ったものです。会社全体を「自ら考える」風土に変えるためには、もっと社員たち自身に主体性を発揮してもらえる取り組みが必要ではないかと感じていました。 「クレドミーティング」体験セミナーのチラシを読んだ時、このプログラムこそ、社員たち自身に主体性を発揮してもらいながら「自ら考える」組織風土を作るプログラムではないかと思いました。 セミナー当日は私に先約があったので、私の代わりに部長の山内が参加することにしました。 体験セミナーでファシリテーターの必要性を実感した― 実際に「クレドミーティング」体験セミナーに参加した山内部長に伺います。セミナーに参加されることが決まった時、「クレドミーティング」にどのような印象を持っていましたか。
(山内部長) セミナーに参加することが来まった段階では、「クレドミーティング」と聞いても実は「何をするのかよくわからない」という印象でした。 ― 「クレド」について、予備知識はありましたか。 (山内部長) 「クレド」についての予備知識もありませんでした。「岡山市内にそういう名前のビルがあるな」と思った程度でした(笑)。 どちらかと言えば、セミナーの内容よりも、セミナーでお会いする他の会社の方々との「人脈作り」に期待して参加したセミナーでした。 ― 「クレドミーティング」体験セミナーに参加した印象はいかがでしたか。 (山内部長) 実際にセミナーに参加して、「『クレドミーティング』は、まさに今のうちの会社に必要なプログラムだ」と思いました。 ― なぜそう思ったのですか。 (山内部長) 一つは講師の説明を聞いて、「クレドミーティング」が組織風土を変えるために有効なプログラムであることが納得できたからです。 国内における建設需要の縮小、日本の人口の減少傾向などから、先行きに対する閉塞感はずっと持っていました。また社長も私も、既に50代手前です。この先何十年も、私たちが会社を引っ張っていけるわけではありません。そろそろ私たちが何でも指示する状態を改め、社員たちが自ら考え解決していくように仕向けなければ、会社の将来はないと感じていました。 会社としての方向や行動基準を社員自ら討論して文章化し、その実現も社員が主体になって進める「クレドミーティング」は、「社員自ら考える」組織風土を「下から」作る上で最適のプログラムだと思いました。 前年に「企業理念」を完成させたのは、いわば「上から」組織風土を変える取り組みでした。「下から」組織風土を変える「クレドミーティング」がこれに加われば、私たちが目指す組織のあり方により速やかに近づけると思いました。 もう一つは、ファシリテーター(※)に司会をしてもらうと、参加者の前向きな思いや考えが引き出され、討論が建設的になると実感できたからです。 ※ファシリテーター‥‥「クレドミーティングプログラム」の全体進行役。中立的な立場で参加者が活発な話し合いを行うための環境づくりと手順を提供する役割。時には参加者からの発言を掘り下げ、日々の具体的な行動に結び付く言葉を、参加者から引き出したり、ゴール達成に向けての調整も行う。 セミナーの中で、「クレドミーティング」のやり方を参加者が体験するコーナーがありました。ファシリテーターは、WISHパートナーズの赤木さんでした。参加者は私を含めて10名弱で、お互い初対面、業界も会社の規模もバラバラだったにもかかわらず、赤木さんの司会で討論すると、一人一人の思いや考えを引き出してもらいながら、全員の考えを一つの方向にまとめていくことができました。「討論にはこういう役割の人が必要なんだ」と、感銘を受けました。 私が社内の会議で司会をすると、どうしても私自身の思いが強すぎて、つい自分の考えの方に議論を誘導してしまいます。そういう司会のやり方では、本当の意味で全員が参加する討論はできないんだということが、赤木さんの司会のやり方を見てよくわかりました。当社の目指す方向や行動基準を社員同士で話し合い、文章化し、浸透させていくにあたっては、赤木さんのように外部の中立的な立場の方にファシリテーターを務めていただきたいと思いました。そのような討論を通じてみんなが一つの方向に向かっていけるようになったら、うちはもっとすごい会社になると思いました。 それでさっそくセミナーの翌朝、社長に「クレドミーティング」の導入を進言しました。 (瀧川社長) セミナーがあった日の翌朝、山内が「いい話を聞いてきました!」と興奮して社長室に入ってきたことはよく覚えています。 研修にお金をかけたことがない会社だった― 瀧川社長に伺います。山内部長の進言を受けてすぐ「クレドミーティング」の導入を決めましたか。 (瀧川社長) いいえ。しばらくは迷いました。 ― どのような問題で迷いましたか。 (瀧川社長) 一つは、時間の問題です。 全員が異常なまでに忙しく働いていて、日本全国どころか世界中を飛び回っている中、果たしてこのようなミーティングのために、社員たちが時間を取って集まれるのか? という不安がありました。 もう一つは、お金の問題です。 当社は創業80年になりますが、恥ずかしながらそれまで全く研修にお金をかけたことがない会社でした。社内で研修など受けさせるよりも「とにかく外に出て稼いで来い!」という会社だったんです。そういう私たちの感覚からすると、「クレドミーティング」の導入費も決して気軽に出せる金額ではありませんでした。ですので、わざわざお金をかけなくても、自分たちで似たようなことはできるんじゃないか? という迷いはありました。 ― 最終的に、「クレドミーティング」を導入することにした決め手は何でしたか。 (瀧川社長) 「クレドミーティング」導入にあたっての打ち合わせの時、WISHパートナーズの赤木さんにお会いし、「人の話を引き出す力」を実感したことが大きかったです。その際、当社の経営課題や目指している方向をヒアリングしていただいたのですが、話していると自分がぼんやりと思っていたことを、はっきり言葉にしてもらえる印象がありました。 それから、一つ思い出した話がありました。それは鎌倉時代の宗教家が自分の教えを広げる時、必ず人々に発言をさせていたという話です。発言するためには理解しないといけないので、発言させられた人々は自然に話を聞くようになり、結果的に教えが広がり、それが町おこしにもなっていったそうです。会社おこしも、町おこしと同じかなと思いました。人は仕事でも何でも、「自分のため」「家族のため」「会社のため」「お客様のため」「社会のため」といった「志」がないと、続けていけません。このようなファシリテーターの方がいれば、社員たちの「志」をうまく引き出して、一つにまとめていってくれる気がしました。 それで2010年(平成22年)の年末、「クレドミーティング」の実施を正式に依頼しました。 「クレド作成ミーティング」に向けての準備― 「クレド作成ミーティング」の実施前に、どのような準備をしましたか。 (瀧川社長) まず2011年(平成23年)の年明けに、全従業員の前で、今年は会社の行事としてクレド作りに取り組むことを発表しました。 次に、「クレド作成ミーティング」の参加メンバーを選抜しました。当社は50名近い従業員がいますが、「クレド作成ミーティング」は参加者を25名程度以下に絞った方が、討論の成果が出やすいとのことでした。そこで、「営業」「技術」「機材センター」「総務」の各部門のバランスを取りつつ、会社の次代を担う若い社員たち26名を選抜しました。
(山内部長) それから、「クレド作成ミーティング」の会場を確保しました。普段の仕事環境から切り離された場所が望ましいとのことでしたので、「岡山いこいの村」という温泉付きの研修宿泊施設を選びました。 「クレド作成ミーティング」が始まる1週間ほど前に、4つの質問が書かれた「事前質問シート」を参加者に配布しました。この「事前質問シート」はファシリテーターの方が作成したもので、4つの質問に対する回答が、クレドで宣言する当社の「使命」「事業価値」「ビジョン」を討論するための、たたき台になるとのことでした。 「クレド作成ミーティング」1日目― 「クレド作成ミーティング」はどのような日程で行いましたか。 (山内部長) 「クレド作成ミーティング」は次の日程で行いました。
会場:宿泊研修施設「岡山いこいの村」(瀬戸内市邑久町)中会議室 ― 「クレド作成ミーティング」の1日目は、どのように進みましたか。 (山内部長) まずファシリテーターの方から、「クレド」や「クレド作成ミーティング」がどのようなものなのかについて説明がありました。「研修ではなく、あくまで自分たちで自分たちの行動基準を決める場であること」、「ファシリテーターは講師ではないこと」などを強調されていました。どのような「クレド」にすれば最も効果的なのかについても、詳しい説明がありました。討論を生産的にするための「グランドルール」5項目も教えていただきました。 次に全体を5~6人ずつの5班に分け、各班の「司会」「議事録」「時間管理」の各担当者を選出させました。各担当者の仕事や、討論の進め方ついても、ファシリテーターの方から細かく指示がありました。 討論の準備ができたところで、まず「会社の現在の課題は何か?」を各班で話し合い、発表し合いました。あらかじめファシリテーターの方から「そもそも課題とは何か」の説明もありました。各班から様々な課題が発表されましたが、一番多かったのはいわゆる「ホウ・レン・ソウ」に関する課題でした。 課題を共有したところで、当社の「使命」「事業価値」「ビジョン」の討論に入りました。まずファシリテーターの方から、「使命」「事業価値」「ビジョン」はどのような要素で構成すればよいかの説明がありました。続いて班ごとに、各構成要素に何を入れるべきかについて、各自の意見をポストイットに書いて模造紙に貼り、理由を発表し合い、討論して要素を絞り込み、班としての文案をまとめました。討論時間の大枠はあらかじめ決められていて、ファシリテーターの方から随時「今どこまで進んでいますか?」「あと20分です。そろそろまとめに入ってください」といった指示がありました。 討論を無駄なく進めるために、進行方法が綿密に考えられていると感じました。 各班でまとめた「使命」「事業価値」「ビジョン」の文案を発表し合ったところで、1日目は終了しました。 ― 1日目を終えて、どのようなことが印象に残りましたか。 (山内部長) 議論が驚くほど白熱して、しかも真面目な議論になったことが印象に残りました。「クレド作成ミーティング」が始まるまでは、「果たして真面目な議論になるだろうか?」と不安でした。実際に討論が始まると、会社や仕事のことをみんなが真剣に考えてることがわかって、「みんな立派だな、偉いな」と感動してしまいました。細かい部分では意見がくい違う部分もあって、時に議論が紛糾することもありましたが、大筋ではみんなが同じ方向を目指そうとしていることがわかり、心強く感じました。 (瀧川社長) 私は1日目は討論が終わる頃に着いて、夕食だけ一緒に食べたのですが、みんなクタクタになっていました。これはみんなよっぽど真剣に議論したんだなと思いました 「クレド作成ミーティング」2日目、3日目
(山内部長) 「クレド作成ミーティング」の2日目、3日目は、3月上旬の土日に泊まりがけで行いました。 ― 2日目は、どのように進みましたか。 (山内部長) まず2日目は、前回各班から発表された文案をたたき台に、当社の「使命」「事業価値」「ビジョン」を詰めていきました。まず各班で「文案の中で残したいキーワードとその理由」を話し合い発表し、各班の発表に対して、全体で賛成意見・反対意見を出し合いました。 2日目の討論も非常に白熱しました。どのキーワードを残すかについては全員がそれぞれ思い入れがあり、容易に意見がまとまりませんでした。予定では2日目に「使命」「事業価値」「ビジョン」を確定することになっていましたが、この日は「残すキーワード」をほぼ合意できたところで時間切れとなりました。 ― 翌3日目は、どのように進みましたか。 (山内部長) まず当社の「使命」「事業価値」「ビジョン」を文書化する討論から入りました。前日に続き、熱い議論が交わされました。特に当社の「使命」については、「安心、安全なライフラインの確保」か「安心快適な街づくりのお手伝い」かで全体が2つに割れ、揉めに揉めました。昼過ぎまでかかってようやく、「使命」「事業価値」「ビジョン」の文面を合意できました。 「使命」「事業価値」「ビジョン」を確定できたところで、これらを実現するための日々の「行動基準」の討論に入りました。最初にファシリテーターの方から、効果的な「行動基準」を作るためのポイントや討論の進め方などについて、詳しい説明がありました。「行動基準」を考えるための20の質問がファシリテーターの方から示され、20の質問に対する回答を3グループで分担して討論しました。各グループでの討論を通じて「行動基準」の原案ができたところで、3日目が終わりました。 ― 2日目、3日目を終えて、どのようなことが印象に残りましたか。 (山内部長) 1日目に続き、「使命」「事業価値」「ビジョン」をめぐって熱い議論を闘わせる社員たちを見て、みんなが会社や仕事に対して想像以上に真剣な思いを持っていることがわかり、感動しました。その一方で「具体的に何をするのか」の議論がなかなか始まらないので、実は少し心配していたのですが、3日目からはいよいよ具体的な「行動基準」の検討が始まり、安心しました。「行動基準」を考えるための20の質問も、よくできていると思いました。 「クレド作成ミーティング」最終日― 「クレド作成ミーティング」最終日の4日目は、どのように進みましたか。 (山内部長) 4日目は、前回各グループから出された「行動基準」原案を、より具体的で日常の行動に直結する表現にブラッシュアップしていきました。 最初にファシリテーターの方から、具体的で日常の行動につがなる「行動基準」と、あいまいで日常の行動につながらない「行動基準」の違いの説明がありました。その後は、各グループが担当項目の「行動基準」案を発表し、他のグループが突っ込みを入れる、の繰り返しで、「行動基準」の表現がどんどん具体的になっていきました。表現が具体的になるに従って、目指すレベルもどんどん上がっていきました。たとえば、「ていねいに挨拶します」という表現は、「どのような挨拶をすれば丁寧なのか」を「目に見える行動レベル」まで落としていくことを行いました。 「行動基準」をブラッシュアップする討論も白熱しました。朝の9時から討論を始めて、「行動基準」のすべての項目が確定した時には、夜の8時を過ぎていました。 ― 4日目を終えて、どのようなことが印象に残りましたか。 (瀧川社長) 「行動基準」がより具体的で厳しいものになるように、社員たちが進んで意見を出し合う姿が印象的でした。あるグループが案を出すと、別のグループから「その基準では甘すぎる」と突っ込みが入る場面が、何度も見られました。自分たちで立派な「使命」「事業価値」「ビジョン」を決めた以上、「使命」「事業価値」「ビジョン」の達成に必要な「行動基準」も厳しくしないといけないという意識が、自然に働くのかもしれません。 クレドを浸透させるために行ったこと― 「クレド作成ミーティング」でクレドが完成した後は、どのようなことを行いましたか。 (山内部長) まず、完成したクレドを社内に浸透させるための体制を、ファシリテーターの方からの助言に基づいて作りました。 クレドを会社に根付かせるには、月1回全従業員で集まり、「クレドをどれぐらい実行できているか」「実行できてない点をどうすれば実行できるか」を話し合う「クレド浸透ミーティング」が必要とのことでした。しかし当社は50名近い従業員がおり、全員で集まると、かえって生産的な討論がしにくくなります。 そこでまず、クレドの浸透を中心になって担う「クレド実行委員」8名を、「クレド作成ミーティング」参加者からの立候補で選びました。次に全従業員を、各自の仕事の性質に応じて「資質向上委員会」「品質管理委員会」「ホウ・レン・ソウ委員会」「行動規範委員会」の4つに分けました。毎月の「クレド浸透ミーティング」は、これら4つの委員会に分かれて行います。ファシリテーターは、その委員会を担当するクレド実行委員が務めます。各委員会の「クレド浸透ミーティング」が終わった後、クレド実行委員同士で集まり、各委員会の進捗報告や今後の計画を討論しています。クレド実行委員のミーティングのファシリテーターは、「クレド作成ミーティング」に引き続き赤木さんに務めていただいています。
また、完成したクレドは携帯できるサイズのカードに印刷し、従業員全員に配布しました。勤務時間中は全員がこのカードを常時携帯しています。
さらに毎日の朝礼で、クレドを1項目ずつ唱和しています。朝礼では、ファシリテーターの方から教わった「Good & New」(※)も行っています。 ※Good & New:24時間以内に起きた良かったこと、新しく気がついたことを、グループで話し合うワーク 社員たちの激論を通じて決まった「好感度No.1の技術者集団を目指す」というビジョンは、さっそく新しい社用封筒などに印刷し始めました。
会社の変化― 「クレドミーティング」を導入して、会社が変わったと感じることはありますか。 (瀧川社長) はい。クレドが完成してまだ5カ月ですが、会社が変わったと感じることが大きく3つあります。 1つ目は、「ホウ・レン・ソウ」の量と質が飛躍的に向上したことです。 2つ目は、討論を通じて問題を主体的に解決する風土が、社内に根付き始めたことです。 3つ目は、社内の雰囲気が明るくなったことです。 ― 1つ目の「『ホウ・レン・ソウ』の量と質が飛躍的に向上した」についてご説明ください。 (瀧川社長) 「クレドミーティング」の導入前は、報告や相談の頻度にムラがあり、内容も漠然としたものが多く見られました。 「クレド作成ミーティング」では、「ホウ・レン・ソウ」についての問題意識が、社員たちに改めて共有されました。社員たちの討論を通じて、「ホウ・レン・ソウ」についても具体的な「行動基準」が決まりました。
さらに、クレドを社内に浸透させる組織の1つとして、「ホウ・レン・ソウ委員会」も作られました。「ホウ・レン・ソウ委員会」は、この「行動基準」を達成するために『ホウレンソウマニュアル』という冊子を作ってくれました。このマニュアルには、「ホウ・レン・ソウ」のルール・やり方・フロー図などがまとめられています。
このマニュアルができてからは、社員たちが報告・連絡・相談をメールでどんどん上げてくるようになりました。報告・連絡・相談の内容も「いつ」、「誰が」、「何をする(した)」が明確なものになりました。おかげで、現場や顧客の状況をどこにいても把握できるようになりましたし、社内全体で共有できるようになりました。ホウ・レン・ソウは会社の生命線ですから、これは本当に大きな進歩です。 (山内部長) こちらが指示しなくても社員たちが主体的に報告・連絡・相談してくれるようになったので、社員たちに仕事を任せやすくなりました。 ― 2つ目の「討論を通じ問題を主体的に解決する風土が社内に根付き始めた」についてご説明ください。 (瀧川社長) 「クレド作成ミーティング」の冒頭で、ファシリテーターの方から、生産的な討論を行うための5つの「グランドルール」を教わりました。また、「クレド作成ミーティング」でも、その後のクレド実行委員会の月例ミーティングでも、社員たちの討論が非生産的になりそうになると、ファシリテーターの方が適宜質問や確認を入れて、討論の方向を明確にしてくださっています。 ファシリテーターの方のアドバイスを受けながら、クレドの作成や浸透のための討論を毎月重ねることを通じて、社員たちの討論力や問題解決力が確実に上がっていると感じます。上からの指示を待つのではなく、自分たちで考え行動する組織風土への転換が起こり始めていると感じます。 (山内部長)社員たちの討論力は、明らかに上がっています。「クレド浸透ミーティング」が始まった頃は、横で聞いていて「大丈夫かな?」と感じる場面もよくありました。ここ2カ月ほど「クレド浸透ミーティング」に出席できなかったのですが、先日ひさしぶりに出席したところ、きちんとテーマに沿った前向きな提案が次々に出されていて、「みんな進歩してるなぁ」と感心しました。全員が自分の行動に落とし込めるところまで議論を詰める習慣が、「クレドミーティング」で定着しつつあると感じました。 ― 3つ目の「社内の雰囲気が明るくなった」についてご説明ください。 (瀧川社長) 社員たちの日常の態度も変わり始めていると感じます。クレドで挨拶や態度についての具体的な「行動基準」を宣言したせいもあると思いますし、自分たちで宣言した「使命」「事業価値」「ビジョン」を、自分たちで実現していく体制ができたせいもあると思います。
(山内部長) 私自身、クレドで宣言した挨拶や声掛けをすると、自分が気持ちよく感じます。 導入を迷っている経営者の方へのアドバイス― 「クレドミーティング」の導入を迷っている経営者の方へ、何かアドバイスがあればお願いします。
(瀧川社長) 導入を迷う経営者の方は、どのようなことで迷うのでしょうね。 ― まず、「本当にうちの会社でできるのか」ということで迷われるようです。 (瀧川社長) 少なくともうちの会社でできたわけですから、他の会社でできないわけはないと思います。出張出張で世界中を飛び回ってるうちの社員たちが、月1回の「クレド浸透ミーティング」には、極力都合をつけて集まってきているわけですから。 ― もう一つ、「本当にやる意味があるのか」ということで迷う経営者もおられます。 (瀧川社長) それは経営者が会社をどう考えるかによりますよね。「この会社であと5年10年メシが食えればいい」と考えるなら、たぶんこういうものは必要ないでしょう。「会社は自分個人のもの、社員は自分の手足」と考える方にも必要ないと思います。でも会社を一つの生き物と考えて、みんなが同じ方向に向かって、売上も上げていきたい、物も心も豊かにしたいということであれば、これは絶対に通るべき道という気がします。 だから「『クレドミーティング』をやる意味が本当にあるのか?」という問いは、「自分の会社をどう考えてますか? 本当にそういう会社でいいんですか?」という問いになってしまうのではないでしょうか。
※ 取材日:2011年11月 ※ 株式会社タックのWebサイト ※ 取材:カスタマワイズ |